山間の村で出会う伝統の暮らし スイスVo.1

代々受け継がれてきたチーズ作り。
さまざまな種類のチーズが並ぶビュッフェ。

エンガディン 伝統の暮らしに触れる 昔ながらのチーズ作り

 スイスでは、英語、ドイツ語、イタリア語のほかに、ロマンシュ語という言語を使う地域があります。
スイス全人口のおよそ0.5パーセントしか使われていないロマンシュ語は、このエンガディンを含むグラウビュンデン州で受け継がれてきました。ロマンシュ語を話す人は徐々に少なくなってきていますが、政府や地元の人たちによって保護活動も続けられています。

 周囲をベルニナ山群に囲まれた地形によって、独特の言語や文化が守られてきたエンガディン地方。その伝統の暮らしが息づくエンガディンの小さな村を訪ねました。
 旅の拠点は、世界的な山岳リゾート地として知られるサン・モリッツから車で10分ほどのポントレジーナ。人口およそ2000人が暮らす小さな村ですが、アットホームで優雅なホテルも点在するこぢんまりとしたリゾート地。伝統的な建物とモダンな建物がほどよく調和し、穏やかな時間が流れています。
 メインストリートには、本屋さん、ベーカリー、チョコレートショップなどの小さなお店が点在し、それぞれ厳選した質のよい商品がセレクトされていました。

 地元の人たちも通う人気のチーズ屋さんには、さまざまな種類のチーズやローカルプロデュースのハーブティーやスパイスなども並んでいます。近くのハンドメイドのチーズ工房でつくられたというチーズを見つけて購入。ワイルドフラワーが豊富な近隣の深い山々で育った牛たちの乳でつくられたチーズは、フレッシュで滋味深い味わいでした。

 ポントレジーナから5キロほど離れたモルテラッチ駅近く。森の中にたたずむ素朴な山小屋が、昔ながらの伝統的な方法でチーズ作りを続けている「モルテラッチ・チーズ工房」です。見学者にも開放された工房をのぞいてみると、火にかけられた大きな鍋に新鮮なミルクがたっぷり。熟練の職人さんがゆっくりとかき混ぜながらミルクを温めてゆきます。
 時間をあけて、発酵、凝固させて、型に流し込む。チームワークと手際のよさに思わず見学している人たちから拍手がわき起こりました。
 途中、職人さんがチーズが固まる時にできるホエー(乳清)をコップに注いでくれました。「栄養満点だよ」と言われて試飲。できたてのホエーをおそるおそる飲んでみると、口のなかにほんのりとやわらかな酸味が広がりました。この工房でつくられているチーズは軟質タイプと半硬質タイプ。
 チーズ作りを見学した後は、工房でつくられたチーズのほか生ハムやドライフルーツなどが賑やかに盛り付けられたチーズビュッフェを楽しみました。

 アルプスの恵みを古(いにしえ)の人々の知恵で凝縮した郷土食。新鮮な空気と共に手作りのチーズを味わいながら、山間の小さな村で営まれてきた昔ながらの暮らしを想像しました。

ポントレジーナのメインストリート

地元で人気のポントレジーナの町のチーズ屋さん

ローカルメイドのチーズが並ぶ

「Alpine Cheese Dairy Morteratsch」
(モルテラッチチーズ工房)
Morteratsch 6
Bahnstation Morteratsch
7504 Pontresina
tel 41-81-842-62-73
www.alp-schaukaeserei.ch
取材協力:
スイス政府観光局
www.myswitzerland.com/ja/home.html
スイス インターナショナル エアラインズ
www.swiss.com
スイストラベルシステム
www.raileurope.jp

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