シルクロードの終着点 宗像への旅 宗像Vo.1

まさに絶海の孤島という言葉がふさわしい沖ノ島。
神職の方が毎日神事を執り行なう。

“海の正倉院” 沖ノ島

 宗像を特別な場所にしているのは沖の島の存在だろう。玄界灘の約60キロの沖合に浮かぶ絶海の孤島。灰色の岩と緑の原生林に覆われた周囲4キロほどの島は、本土にある宗像大社の境内地だ。神職がひとりで常駐し、毎日神事が執り行われている。

 この沖ノ島は4世紀ころから9世紀末まで国家規模の盛大な祭祀がおこなわれてきたといわれている。また、大陸と日本を結ぶ中継点だったという。遠くはペルシャからの文物や新羅の金の指輪をはじめとするおびただしい奉納品が残されている。地表とその近くから見つかっているものだけで8万点。すべて国宝だ。この神宿る島は「海の正倉院」と呼ばれる。

 なんといっても素晴らしいのは、この島がこの21世紀まで何も変わらず残されてきたことではないだろうか。千年を超えて、宗像大社と宗像の人々は、この島から草木一本持ち出していけないという掟を守り続けていたのだ。今も女人禁制、男性も限られた人しか上陸することはできず、まず島に入る前には海中で禊をしなくてはならない。なので、もちろん旅行者も海を渡って訪ねることはできないが、高台から天気のよい日に水平線に薄くその輪郭を表す沖ノ島を見ることができる。白く靄って見える島影は、かえってその神秘性を増して感じられるから不思議だ。オーラのようなものさえ感じる。

 宗像大社は、この沖の島の沖津宮、大島になる中津宮、そして本土にある辺津宮の三宮からなっており、多くの人々が参拝するのがいわゆる宗像大社と地図に記されている辺津宮。森のなかにあり、神聖な空気に満ちている。そして、うれしいことに沖ノ島から収集された国宝の代表的なものは、付設されている「神宝館」でみることができる。そのご神宝は、ペルシャのグラス、中国の敦煌の壁画に描かれているのと同じ金銅の龍頭、いろとりどりのガラス玉の首飾りなど、その美しさは素晴らしい。
 もし来年、世界遺産の認定を受ければ、多くの人でにぎわうことになるだろう。その前に静かな空間でじっくりといにしえの時間に思いをはせてみてはどうだろう。

島にはまだまだ国宝級の遺物があるといわれている。

宗像大社は森のなかにたたずむ。交通安全の守護でも知られる。

神に仕える人々の姿もすがすがしい。

「宗像大社」
JR鹿児島本線東郷駅から車で15分。

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