知られざるスイス Vol.2
エルシュマット/ロイカーバード

     
ヴァレー州には、ブドウ畑がパッチワークのように広がる。
ライ麦パン作りを教えてくれるエルシュマットの村人。
生地を捏ねて成形し、木型で模様をつければあとは焼くだけ。

山の上にある村でスイスならではの休日をすごす

 ツェルマットがあるヴァレー(ヴァリス)州には、アルプスの4000m級の名峰の大半が集中しています。ツェルマットから足を延ばし、ヴァレー州の小さな村々を訪ねると、素朴な山村の暮らしや、地元の人々が愉しんでいるスイスの休日を体験することができます。
 ヴァレー州は晴天率が高く、ローヌヴァレー沿いの斜面にはワインづくりのためのブドウ畑が広がります。州としてのワイン生産量は、スイスでナンバーワンを誇る地域。この地方の郷土料理として知られるのが、ラクレットチーズやドライビーフ、ライ麦パン。このライ麦パンづくりを体験できるプログラムに参加するために、エルシュマット村へと向かいます。
 エルシュマット村へは、ロイク駅から車で山道を20分ほど走ります。絶景が続く道を進み、標高は1200mを超えます。ここでは、村の人々が伝統のライ麦パンづくりを教えてくれます。材料は、ライ麦、塩、水、イースト。発酵のために28度に設定された小屋の中で汗だくになりながら、パンの生地を捏ねていきます。丸く成形し、かわいらしい模様の木型で模様づけ。かつては、村の窯は半年に1回ずつ、村人が総出でパンを焼いていたとのこと。長く保管することができるのライ麦パンには、厳しい環境で生きていく人々の知恵が集結しています。パンが焼けるまでは、村を散策。この村では、現代ではほとんど栽培されなくなった太古の作物などをつくり続け、絶滅危惧種である植物の種も保存しているそうです。散策のあとは、お茶の時間です。ライ麦パンを試食させてもらうと、酸味がきいて素朴な味わいです。焼きあがったライ麦パンは、お土産に。とても硬いので、安心して荷物にも詰め込むことができます。伝統的な暮らしを伝え、貴重な植物を守る活動を続けている村人の「私はスイスを守っている人間のひとり」という言葉が心に残りました。

 ヴァレー州の旅では、ロイカーバート(標高1402m)も訪れたい場所です。絶壁に囲まれたこの村には、ローマ時代に発見されたといわれる源泉があります。平均温度51度の湯が沸き出す村には20を超えるテルメがあり、ゆっくりと体をいたわる休日をすごすにはうってつけです。ロイカーバード最大規模の温泉施設「ロイカーバート・テルメ」は、10の温泉プールがあり、1日ゆっくりすごす人もいるほど。28度から43度のぬる目のお湯に浸かり、目の前に迫る絶壁の眺めを見ながらすごしていると、心も体も解き放たれていきます。
 標高の高い場所にある村は、空気もおいしく感じる清々しい世界。そして、決して便利とはいえない環境に暮らす人々の強さと優しさを感じることができました。

焼き上がったライ麦パン。独特の酸味があり食べ応えがある。


温浴を楽し人々で賑わう「ロイカーバート・テルメ」。


源泉の温度が低いので、ゆっくりと入浴を楽しめる。

 
取材協力:
スイス政府観光局
https://www.myswitzerland.com
スイス インターナショナル エアラインズ
https://www.swiss.com
スイストラベルシステム
http://www.raileurope.jp
ロイカーバート・テルメhttp://www.leukerbad-therme.ch

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