~食を楽しむ小さな街めぐり ベルギーVo.1~
伝統漁法を受け継いでいるのは12家族のみ。親から子へと受け継がれる。
引き網をつけた馬たちは、海岸に平行して進んでいく。
オストダンケルク 伝統的なエビ漁って?
美食の国、ベルギー。オストダンケルクという北海沿岸の小さな町で、馬に乗ってエビ漁をしている、という話を聞いて、さっそく向かいました。馬に乗って? いったいどうやってエビを獲るのだろう? 素朴な疑問が頭のなかをめぐります。かつては、イギリス、フランス、オランダの一部でも、500年ほど前から馬やロバに底引き網を引かせるこの伝統漁法が行われていました。しかし、重労働であることや収入の問題から、今でも受け継がれているのはベルギーのみ。
現在、このエビ漁を行っているのは12家族。家族ごとに、馬の世話や、網の手入れなどを行い、親から子どもたちに継承されていきます。市からもサポートを受け、2013年には世界無形文化遺産に登録されました。 伝統的なこのエビ漁の様子を見ることができるのは、6月中旬から9月中旬の干潮時。獲れるのは、「クレベット・グリス」と呼ばれる、小さなサイズの灰色のエビです。
海岸へ向かう道から馬に乗った漁師さんたちがやってきました。馬たちは農耕馬なので、足がとても太く、頑強な体つきです。12家族ごとに海岸へと向かい、遠浅の海に一斉に入っていきます。左右に分かれて引網をつけた馬たちが進んでいく姿は、壮観です。しばらく海岸線に平行に進んでいくと、くるりと方向転換をして、スタート地点あたりまで戻ってきました。
砂浜で引き網をあげると、なかにはエビがたくさんかかっています。そのエビはそのまま海岸沿いの広場で茹で上げられ、観客にも振る舞われます。美しい色に茹で上がったエビは、香ばしい匂いで旨味がぎゅっと詰まった味わい!
漁師さんたちは口を揃えて「馬との信頼関係が大事」と言います。夏の風物詩を見に、海沿いの街までひと足のばしてみてはいかがでしょう。
エビ漁のスケジュール
http://visitkoksijde.be/en/shrimpfishermen-horseback
photographs by Yuri Manabe
遠浅の広がる海と高い空。気持ちのよい風景が広がる。
漁を終えた馬には荷台がつながれ、観光客も乗せてくれる。
獲りたてのエビをその場で茹でる。旨味がつまった味わい。