Another Belgium ベルギー  アントワープ

アントワープ路地裏散歩

 ベルギー第2の都市、アントワープ。この街は、近年、「アート、建築、食、ファッション、デザインなどにおいて旅人を魅力する街である」という「クール・キャピタル」宣言をしてから、さらに世界中から注目されています。
 歴史を紐解いてみると、欧州屈指の貿易都市であったアントワープでは、創作意欲をかきたてられた人々が、この街で作品を生み出し、世界へと羽ばたいています。16、17世紀にはルーベンスのような巨匠を生み、20、21世紀には、ドリス・ヴァン・ノッテンをはじめとする6人のデザイナー「アントワープ6人衆」が誕生しました。
 街を歩いていても、個性的なファッションの若者が多く、その様子を観察することもアントワープの楽しみ方のひとつです。

 そして、今回の取材で現地のガイドさんに教えてもらったのが、見つけるのがちょっと難しい、迷路のような小道です。
 場所は旧市街。日本人には「フランダースの犬」で知られる大聖堂の近くです。入口には「16VLAEYKENSGANG」と書かれた銅版のような雰囲気のある看板がかかっています。この看板を見つけることができたら、しめたもの。その入口に一歩足を踏み入れると、同じ素材を使った看版が横の壁にかかっていて、4つのお店の名前が記されています。
 なぜなら、この小道には、日本人アーティストの作品も扱っているギャラリー「Axel Vervoordt Gallery」や、アントワープを代表する老舗フランス料理店「Sir Anthony Van Dijk」、家庭的でゆっくり食事を楽しめるベルギー・フランス料理の「’t Hofke」、40年同じメニューを守り続けているベルギー料理店「Estro Armonico」という、どの店も立ち寄りたくなるお店が並んでいるからです。
知る人ぞ知るこの道は、散歩するだけでも、何かを発見した気分になれる場所。16世紀に靴屋さんが暮らしていたといわれる建物と、隣の建物の間にある細い道を歩いていくと、ベンチやテーブルと椅子が何気なく置かれていて、静かな時間が流れる空間が現れます。重厚な鍵がついたドアの向こうには、何があるのだろう?と想像も広がります。曲がり角の先には、小さな中庭のような空間があり、自転車がとめられていました。人の気配があるような、ないような……。さきほどまでいた街の喧騒とは別世界です。

 アントワープ散策の際には、ぜひこの小道を探してみてください。歩いてみるだけでもよし、ギャラリーに立ち寄るのもよし、お腹がすいたらレストランで食事を。フランス料理にするか、ベルギー・フレンチにするか? ベルギーの旅ならではの選択肢がここにはあるのです。
Axel Vervoordt Gallery http://www.axel-vervoordt.com
Sir Anthony Van Dijck www.siranthonyvandijck.be
’t Hofke
www.thofke.com